牡羊座

夜空に浮かぶ牡羊座は唯一の二等星、ハマル以外は三等星以下の星が多く、それほど明るい星座ではありません。古代は牡羊座に春分点があり、そこに太陽が到達したときが一年の始まりとされていました。そのため占いでは牡羊座が第一の星座として現れるのです。

牡羊座のギリシャ神話を紹介しましょう。
テッサリアの王様にはプリクソク王子とヘレ王女という子どもがいました。しかし後妻が子どもたちを邪魔に思い、悪巧みをして子どもたちを生贄として奉げようとします。まさに儀式が始まろうとした瞬間、黄金の羊が現れ、プリクソク王子とヘレ王女を背中に乗せて飛び立つのです。しかし羊があまりにも早いスピードで走ったため、妹のヘレは海に落ちてしまいます。生き残ったプリクソスはコルキスに運ばれ、感謝の印として黄金の羊をゼウスに奉げました。金色の毛皮は木にかけられ、昼も夜も眠らない火を吹く竜に守らせていましたが、最後は勇者イアソンが手に入れます。それを天に引き上げたのが牡羊座とされています。

支配星が火星の牡牛座は、熱い情熱のエネルギーをもつ。

牡羊座の持つパワーは自己の覚醒のエネルギーでもあると言われています。彼らの情熱は大変熱く、激しいものです。牡羊座の人は素直さと直情性を合わせもっています。嬉しい時は心から喜び、怒りを覚えたときは正直に表情に表します。年を経てクールに振る舞えるようになっても、彼らの心の中では激情が渦巻いているのです。
牡羊座の支配星は火星です。惑星はギリシャ神話の神々の名前からつけられているのですが、火星の神は軍神マルス。猛々しい印象を持った人もいるのではないでしょうか。実際に火星が意味するのは、行動力、自己表明、積極性、攻撃的とされています。

牡羊座の人は「こうしたい」という目的が生まれるとそれを実行するために、がむしゃらに行動します。達成が難しい道だろうと、邪魔する人がいようと勇敢に突き進みます。パイオニア精神を持ち、まだ誰もやったことのないことを成しえる。それこそが自分の価値を高める手段であり、自分への誇りとなるのです。
自分の願いを叶えることに熱狂的になるため、その衝動性から失敗が多いことも特徴のひとつでしょう。神話の金の羊が、プリクソク王子とヘレ王女を安全な場所へ運ぶことに夢中になり、ヘレ王女が落下したのに気付かなかったように、思考が常に主観的であり、他人への配慮に欠けるところがあるのです。


火のエレメントの牡羊座は、直感で突き進んでいく、まさに「火がついたら止まらない」タイプ。

占星術では12星座は「火」「地」「風」「水」の4種類に分類されます。これをエレメントと言います。牡羊座は火のエレメントに区分されます。火のエレメントは「直感」で動く星座とされています。なにか得することを見出したわけではないのに、これをしてみたい、と直感すると未知なる分野にも果敢に進んでいく牡羊座は、まさにその特徴を捉えているのでしょう。あなたの周囲にも、急にフルマラソンを志してジョギングを始め、短期間で目標を達成してしまった、というように、周囲の人が驚くような挑戦をやってのけた牡羊座の人はいないでしょうか。火がついたら止まらない。それが牡羊座のエネルギーなのです。

「活動宮」の牡羊座にとって大切なのは「誰よりも早く動き出すこと」。

また、占星術では、12星座の行動パターンを「活動宮」「不動宮」「柔軟宮」の3種類に区分します。牡羊座は活動宮。誰よりも早く動き出すことが牡羊座の人にとって大切なのです。ですから、ひとつの物事を達成すると、すぐに関心は別の方向に向きます。常に情熱を燃やすなにかを彼らは求めているのです。
恋愛でもその傾向が現れます。恋する人が現れると情熱的に相手を愛し、そして恋を叶えるために相手を束縛するなど思いついた手段を実行します。しかし恋が破れた後は、再び新しい恋に向かって走り出すパワーを持っているのです。


備え持つリーダーの資質を活かすには、人と価値観を共有することが大切。

牡羊座の人は、指導者としての資質も備えています。リーダーシップを取り、自分が先駆者となって人を率いる牡羊座も少なくありません。彼らは直情的で仲間に感情をぶつけることもありますが、基本的には自分の仲間には親切で面倒見がよいでしょう。そして自分たちの邪魔をするものが現れれば、徹底的に戦おうとします。
幼い頃、親や先生の言うことを素直に聞けない牡羊座の友人はいなかったでしょうか。彼らは自分の存在を主張することが重要なため、自分を抑えつけようとするものには徹底的に対抗しようとする意識を持っているのです。しかし、その性質はせっかくの助言を聞き流すなど、マイナスな方向に傾くこともあります。牡羊座の性質が強い人ほど、若い頃は波乱万丈の、しかし情熱に満ちた青春時代を送ってきた方が多いのではないでしょうか。経験を経て、人と価値観を共有することを覚えれば、牡羊座の直感力、行動力はよい方向へ作動していくことになります。


牡羊座は生まれつき、新しくなにかを始めようとするエネルギーを備えている星座

占星術では天体を12の宮に振り分けこれを黄道12宮(または獣帯)といいます。太陽はこの12の宮を一年かけて移動していくことになります。太陽が白羊宮に入っているときに生まれた人が占星術では牡羊座になります。黄道12宮は白羊宮(牡羊座)からスタートします。
最初の星座である牡羊座のキーワードは「スタート」。つまり新しくなにかを始めようとするエネルギーを生まれつき備えている星座なのです。牡羊座の人は、自分の存在を知らしめることに存在価値を覚えます。自分の考えを話し、おもしろそうなことを見つけるとすぐに飛びつきます。自分の望みは自分で叶える。この自主性が牡羊座の人の行動力の根本にあるのでしょう。
絶えず自分の存在がここに「在る」ことを知らしめるため、彼らは動き続けます。目標を達成したらすぐに別のものに情熱を燃やすことのできる転換力は、自分の存在を消さないために芽生えたものなのでしょう。
その反面、自分が興味を持たないことに関しては、エネルギーを燃やせません。自分が情熱を持てないことを押し付けられることは牡羊座の人にとっては苦痛なのです。稀に上位の人に対して、反抗的な態度を示す牡羊座の人が多いのは、こういった心理がバックボーンになっているのです。


頭の回転が速く、目標達成のために突き進む雄々しい姿が魅力。

頭部を支配するとされる牡羊座らしく、頭の回転が速いのも特徴です。牡羊座は直感で動く星座です。彼らはこの道が正しいと思うと一直線に進みます。そこでハードルが現れると即座に対応を考え、対応していくのです。そういう意味では冷静かつ慎重に思索を巡らす知性とは異なりますが、この土壇場の対応で確実に目標に近づいていく「現実的な知性」を持っている星座と言えるでしょう。
牡羊座の自分を主張したい、という意識が強く出ると、目立ちたがりで人を仕切りたがるようになります。友人たちが楽しんでいる場所に自分が存在しないのが悔しくて、無理をしてでも参加しようとします。また行動が強引になり、ワンマン思考に傾いていきます。
成長していくにつれ、こういった尖った性質は徐々にまるくなります。純真さや情熱はそのままに、人を牽引しながら勇気を持って目標達成のために突き進む。この雄々しい姿こそが、本来の牡羊座の人が持っている魅力なのです。


皇帝
タロットで牡羊座を研究していきましょう。タロットカードには12星座別に紐づけられたカードがあります。
牡羊座のタロットカードは「皇帝」です。
ステラタロットの皇帝は、右手に富を表す玉を、左手に未来の栄光を示す錫杖を持っています。そして足は四の字に組んでいます。これは富や名声を勝ち得、賞賛を得ていることを示しているのです。皇帝の玉座には左右に羊の頭飾りが描かれています。古来より羊は食用として、衣類として重宝されてきた動物で、聖獣として扱われることもあります。この聖獣は皇帝の神々しさを表しています。皇帝のまとう赤い服は情熱や闘争心を示し、皇帝の心の中に熱い情熱があることを示唆しています。
皇帝は名誉や利益といった物質的な喜びや理想を達成するために情熱を燃やし、目標に向かって突き進み、成功という名の喜びを得ます。「皇帝」のカードのキーワードは「戦い、勝利、短期決戦、支配、激情、ワンマン、指導力」です。どれも牡羊座の性質にぴったりとくる言葉です。

牡羊座の人は「目標」を見つけさえすれば、誰よりも早く達成に向けて走り出します。考える前に動くというよりは、動きながら考える。この性急さは牡羊座の人の特徴のひとつです。彼らの情熱は炎そのものです。時間がかかれば火はくすぶり、やがて消えてしまいます。そのことを本能的に知っているのでしょう。もっとも情熱やエネルギーが高いうちに、彼らは動きだそうとするのです。

そのために慎重さに欠けるところもありますし、自分の力で叶えたいという強い意志からスタンドプレーに走りがちです。あなたも思い立ったら失敗を恐れず突き進む牡羊座の友人を見て、内心ハラハラしたことはないでしょうか。
牡羊座の人はまっすぐで、純粋な心を持っています。そのため彼らは失敗をすることで、自分の間違いに気づき、慎重さや協調性を学び、成長していけるのです。この皇帝のカードは紆余曲折を経て、成功を治めた牡羊座の姿を現しています。堂々として権威があり、人を先導する王者です。しかし、皇帝の傍には従者が控えていません。これは、いくら目的を達成しても、人の信頼を得られなければ孤独な王になるだろう、ということを示しているのです。