魚座

夜空に輝く魚座は三等星以上の明るい星がないため、よく目をこらさないと見つけ辛いかもしれません。強く存在を主張するわけでもなく、天空に溶け込むような星々は、すべてを受容しようとする魚座の人たちの性質を表しているようです。

魚座の星座を説明するときに、尾を紐で繋がれた二匹の魚が描かれます。これはギリシャ神話の物語が元となっているのです。この二匹の魚は愛と美の女神とされるアフロディーテ、そしてもう一匹の魚がアフロディーテの愛息子、エロスになります。アフロディーテとエロスは、神々の宴に出かけました。宴も盛り上がっていたときに、怪物ティフォンが現れました。アフロディーテとエロスは慌てて魚に姿を変え、川に飛び込みます。その時にお互いがはぐれないように、紐で自分たち繋いで一緒に逃げたのです。大神ゼウスは母子愛の象徴としてその姿を星座にして天に上げたとされています。

受容性の強さが魚座の大きな特徴。

魚座の人は、人からの愛や価値観を、受け入れ共感しようとします。魚座の人は優しい、とよく評されます。一緒にいる人の悲しみや喜びを受け止め、自らが同じ境遇に陥ったかのように同情することができるのです。しかし、その分、自分の意思を強固に貫く、という自己意識を持つことが難しくなるという反面も持っています。
同情心の強さから、魚座は愛と奉仕の星座とも言われます。しかし同時に、自分と他人の境界線が曖昧になりやすいため、他人の力を利用して自分の夢を叶えようとする欲望も現れます。依存的な性質が強まると騙されやすく、また人に振り回されやすくなるのです。
魚座の人は自主性を育むことで、誰に対しても優しく、理解力があり、豊かな想像力を発揮できる愛される人になれます。しかし成長するまでは、信じていた人に騙されて痛い目を見ることもあるでしょう。特に恋愛では強い同情心や強く押されると受け入れてしまう受容性が強く現れます。それでも再び人を信じられる受容性が、魚座の人の純真さであり、魅力なのです。


支配星が海王星の魚座は、感受性が強く想像力が豊か。

魚座の支配性は海王星です。海王星の特徴として境界の消滅というものがあります。自分と他人、現実と非現実、こういった境界をなくしていくのです。他人の悲しみを自分の悲しみのように感じる、これは海王星の特徴そのものと言えるでしょう。また神秘体験や幻想といった意味合いも持ち、霊感を持つ人も少なくないとされています。海王星は精神的なことを示す星であり、そのため魚座の人は感受性が強くイマジネーション力が豊かです。ちょっとしたヒントがあれば、どこまでも想像の世界を広げることができる。夢見がちとも言われますが、アーティストとしての才能を秘めている人も多いでしょう。


水のエレメント魚座は、感情を大切にする。

占星術では12星座を火、地、風、水の4つのエレメントに分けます。魚座のエレメントは水。なによりも感情を大切にする星座です。魚座の人は対人関係や情熱、愛をとても大切にする代わり、出世や物欲には欠けるところがあります。そのため、金銭感覚が曖昧な性質を持つ人が多いのも特徴と言えるでしょう。甘え上手で要領がよいので人の活躍に乗じて漁夫の利を得るようなことはありますが、執念深く計画を練って人を陥れながら上を目指していくような執念深さは持ち合わせていないでしょう。


「柔軟宮」の魚座は、なんでも受け入れやすく、変わりやすい性質を持つ。

占星術では12星座を活動宮、不動宮、柔軟宮の3タイプに分けます。魚座は柔軟宮にあたります。柔軟宮の人は変化に素早く対応できる文字通り「柔軟」な性質を持っています。しかし忍耐力、決断力には欠けるところがあります。なんでも受け入れようする「水」と、なににでも変わろうとする「柔軟宮」の性質を持っているからこそ、魚座の人は感化されやすいのかもしれません。

あなたの周囲にも、あの人はころころと意見を変える、もしくはすぐに人に説得されてしまう魚座の人はいないでしょうか?「これが自分」という頑固さがないため、彼らの心は移り変わりやすいのです。その変わり、親しい人から勧められたものをすんなりと受け入れることができるので、人脈を得ることで彼らを介して知識を深め、可能性を広げることができるのです。

強い同情心も相手の思いを受け入れ、同化するという性質から生まれるものです。中にはテレバシーを使っているのかと思うほど相手のことをわかってしまう人もいます。魚座の人が、霊感が強いと言われる所以でしょう。
この「なんでも受け入れる」という特徴は、特に恋愛でその傾向が強く出てきます。魚座の人は、最初は関心の少なかった相手でも、強く思いを寄せられると同情心から相手を受け入れてしまう傾向を持っています。自分を好きになってくれた人を好きになる、という方はこのタイプでしょう。そして一旦、恋に落ちると奉仕的な愛を相手に注ぎます。魚座の人の愛は奉げる愛。愛の見返りにお金が欲しいというような思いを持たない純粋さを心のどこかに持っているのです。彼らにとって大切なのはダイヤの指輪よりも、強い愛情なのでしょう。感情の赴くままに恋をするため、秘密の恋に引きずり込まれてしまう危険もあります。
誠実で、そして深い愛を注いでくれしっかりと守ってくれるパートナーに巡り合うこと、それこそが魚座の人にとって最も幸福な生き方なのかもしれません。


黄道12宮の12番目となる魚座のテーマは「受容」。

占星術では天体を12の宮に振り分けこれを黄道12宮(または獣帯)といいます。太陽はこの12の宮を一年かけて移動していくことになります。太陽が双魚宮に入っているときに生まれた人が占星術では魚座になります。黄道12宮は金羊宮(牡羊座)からスタートするので、双魚宮(魚座)は12番目になります。自己を表現する牡羊座から、人に認められたいと願う乙女座、世界の枠を飛び越えようとする水瓶座など様々な段階を経て、魚座では「自己」からも解放され、すべてのものと融合しようとします。
これが魚座のテーマ「受容」なのでしょう。

しかし魚座の人は受容し、同化しますがまたすぐに別のものを受け入れ、変化してしまいます。気持ちが変わりやすいのもこの性質からです。
また情を大切にする性質のため、感情を乱す争いを嫌います。しかし気持ちの乱れが避けられない状態に陥ると、まずは心の平穏を保つため、夢想に逃げ込もうとするのです。魚座の人で忍耐力が弱い人が少なくないのは、疲れやプレッシャーが感情を乱してしまうからでしょう。魚座の人は、言葉で人を攻撃するようなことはしようとしません。その変わり、音楽や絵画など芸術的な手段で自分の心の内を表現する才能を持っています。
また人を喜ばせ、暖かい感情を向けられると純粋な喜びに浸れます。その喜びを得たいがために、自己犠牲的な愛情を見せることになるのでしょう。その純粋さと受容的な性質から、ときには傷つくこともあるでしょう。しかし魚座の人の純粋さや捨て身の愛情は人の心を動かし、助け手にも恵まれやすいという利点も持っています。
なんだか助けてあげたくなる、そんな思いを掻き立てる魚座の人は多いでしょう。愛されやすい星座と言ってもよいのかもしれません。
色々な経験を経て成長し、この特有の感情の揺れを自分でコントロールできるようになれば、ロマンティックで想像力豊かな人を傷つけない好人物になることができるでしょう。むしろ、その姿こそが魚座の人の本来の姿なのかもしれません。


月
最後にタロットカードの話をしましょう。星座には各々紐づけられたタロットカードがあります。
魚座のタロットカードは「月」。月のカードは迷いや不安、秘密や夢を示します。ステラタロットカードでは暗闇の門番である二匹の犬が向き合い、天空には月が輝いています。そして月の下には大きなサソリが描かれています。暗い印象を受けた人もいるかもしれません。しかし、このカードの中に「光」も描かれています。サソリの向こうには明るい光のアーチを描く二つの塔が見えています。その先にあるのは光の世界。そしてその入り口は目で見える場所にあるのです。希望への道は示されています。このカードは、迷いや不安を乗り越えれば、その先に大きな幸福が待っていることを告げているのです。

「受け入れる」という性質を持っている魚座の人は尊敬する人の考えに影響され過ぎたり、同情から損な役回りにあうことも多いでしょう。夢見がちな性質を持っている魚座の人は、自分の願い通りに物事が進まず、悲しい現実を思い知らされたときに傷つきます。そして心が深く傷ついたとき、夢の世界へと気持ちを逃避させるという性質を持っているのです。映画や小説にのめり込んだり、幸福な自分の姿を夢想したり、想像力豊かな魚座の人にとって逃避場所となる自分だけの世界はいくらでも思いつけるはずです。しかし、再び夢の世界から戻り現実に向き合わなくてはいけない時がやってきます。そのときに現実を受け止め、今の状況を改善するために前に向かうことで成長し、幸福の扉を開けることができるのです。
あなたの周囲にもなかなか失恋の痛みから抜け出せない、魚座の友人がいるかもしれません。彼らの心は繊細で、他の人よりも傷つきやすいのです。立ち直るまでに時間がかかるのは、それだけ彼らが負った傷が深いのです。急かさず優しく見守ってあげましょう。

魚座の人は現実を「受け止める」こともできますから、いつかしっかりと立ち上がり、笑顔で前へ歩き出すときがやってくるでしょう。「月」のカードは人生の中には迷いのときがあり、そしてそれを乗り越えて希望の道へと進めることを示唆しています。感受性の豊かな魚座の人は、他の人以上に傷つき、また喜び、人生を重ねていくのです。それはとても豊かで濃い人生と言えるのかもしれません。 また魚座の人は、月の満ち欠けのように感情の起伏が激しいという特徴も持っています。しかし同時に優しく闇夜を照らす月のように、人を癒すことができる大きな愛情も持ち得ているのです。